ま行

ムカゴイラクサ

アイヌの人たちはイラクサの繊維で衣装を作りました。樹皮で作られた衣装
よりも白く仕上がるため、イラクサの衣装はレタペ「retar-pe(白い・もの)」
と呼ばれています。

イラクサの繊維でアイヌ衣装を作った阿寒在住の日川清さんは、エゾイラクサ
よりも軟らかく仕上がるムカゴイラクサを選びました。衣装一着分の糸を作る
のに7年の歳月がかかったそうです。

アイヌ語で、カパイ「kap-hay(皮部・繊維)」と呼ばれるムカゴイラクサを採取
した後、木槌でたたき、手でもみ、糸にしていく。気の遠くなるような作業と
長い年月をかけ、今年、伝統のアイヌ衣装が出来上がりました。

ムカゴイラクサの採取時期は、11月の初めだそうです。

2012/11/19号掲載

メカジキ

夏の一時期、道東の近海に姿を現すメカジキ。
長いくちばしで舟板を貫くこともあるというこの魚を、アイヌの人たちは舟の上から銛を
投げつけて獲りました。その距離は3~40mもあったそうです。

アイヌ語でシ(sirkap)と呼ばれるメカジキは、クマ同様に高位の神で、この魚を
客としてもてなすことは最も名誉なことだったそうです。食料としてはもちろん、上あごの
硬い部分は銛の材料にも使われました。

「ホタルが低く飛ぶときはシ(メカジキ)が陸近く寄るとき」と言われたそうです。

2012/7/6号掲載

ミソサザイ

 冬は人里まで下りてくるそうですが、その姿は、なかなか見ることができない
ミソサザイ。

 アイヌ語では、トシリポクンカムイ「tosiri-pok-un-kamuy(川岸の穴・の下・
に入る・神)」とか、その鳴き声から「チャクチャクカムイ」などと呼ばれてい
ます。

 アイヌの物語には、「ミソサザイの神が人間を襲う悪いクマの耳の中に入り、
やかましくチャランケ(談判)をし、さすがのクマも謝った」という話があります。

 日本で一番小さな鳥。チャクチャクと鳴くその姿を一度は見てみたいですね。

 今月の塘路湖エコミュージアムセンターの情報紙には、「ミソサザイ」の情報
がありました。

2012/2/24号掲載

ミヤマカケス

ドングリが大好物なミヤマカケス。今年の不作で困っているのでしょうか。

アイヌ語では、エヤミ・トノ「eyami-tono ミヤマカケス・殿」、パケウ・チカ・カムイ
「parkew-cikap-kamuy (口達者な・鳥・神)」などと呼ばれ、雄弁な神として扱われています。

 アイヌの物語には、村の飢饉を救ったミヤマカケスの話が残されています。得意の雄弁を
もって神様に熱心に訴え続けた結果、人間界の危急が救われた話です。この話の背景には、
シカやサケを粗末に扱った人間に、神様が怒った結果の飢饉でした。

 ミヤマカケスがさわいでいる下には、シカの群れがいるそうです。

2011/10/28号掲載

マス

  スーパーにピカピカ光ったマスが並ぶようになりましたね。アイヌの人たちは、夏に遡上してくるマスのことを、サキペ「sak-ipe(夏・食料)」と呼びました。サケと並んで主食の一つになる大事な食料でした。

 マスやサケの産卵場(ホリ場)をアイヌ語で「イチャン」と呼びますが、標津に伊茶仁(いちゃに)、中頓別の一巳内(いちゃんない)など、コタンの人々のよい魚場だったところは地名として残されています。

樺太ではサケと同じようにマスの皮でも、チェ(魚の着物)をつくりました。とてもおしゃれな衣装ですよ。

2011/6/27号掲載