た行

ツリバナ

赤い丸い果実が長く伸びた果柄の先に垂れ、熟すとくす玉のように5つに割れて朱色の種を吊り下げるツリバナ。風に揺れるさまがかわいらしいですね。
この木は弾力があり容易に折れないので、アイヌの人たちはイチイと同じように弓を作ったそうです。アイヌ語では弓の木を意味する「クニッku-nit(弓・柄)」とか、「コケニkomke-ni(曲がる・木)」と呼ばれました。
また、ツリバナの材は粘りがあり緻密なので、細かい彫刻や細工を施すのに適しており、アイヌ模様を彫ったアクセサリーなどの材として現在も使われているそうです。
ツリバナの材で作ったアイヌ模様の細工物、見てみたいですね。

津波

忘れてはいけないことがある。人に伝え続けたいこともある。
アイヌ人たちはそのような教訓などを後の人に伝えるために、「物語」にして古くから語り継いできました。

津波の被害もその一つ。アイヌ語で津波を「プルケpur-ke(ゴボッという音・する)」と呼び、白糠の伝承者、故四宅ヤエさんの、「津波を救ったオタストゥンクル」という物語が残されています。概略は、カムイから津波が来ると知らされたオタストゥンクルは村の人に高い所に逃げるよう伝え、逃げた人たちは助かったというお話で、「神の言葉でも、人間の言葉でもきちんと話を聞くものですよ」と締めくくられています。

今年、岩手県は悲劇を繰り返さないために3月11日を「東日本大震災を語り継ぐ日に」と定めましたね。

タコ

スーパーにお正月用のタコが並びましたね。タコの紅白の色は縁起が良いのだそうです。
釧路や日高方面のアイヌの人たちは、タコをアトウイナウ「atuy-inaw(海・木弊)」と呼んでいます。なるほど、形がイナウ(木弊)に似ています!アイヌの物語の中で、プイ(エゾノリュウキンカの根)がタコになったという話もあります。ひげ状の根がタコの足に似ていますね。内浦湾では大タコが住んでいて、タコの体の色で空までが赤く見えるところは近寄るものでないと言われていたそうですが、山狩りに行ってタコの夢を見ると獲物が授かると言われていたそうです。
アイヌの人たちもイナウに似たタコは縁起が良かったのですね。

トンボ

秋の訪れを感じさせてくれるトンボ。先日、釧路湿原ではたくさんのトンボが飛んでいました。
屈斜路や美幌などでは、アイヌ語でハンクカチュイ「hanku-ka-cuy(へそ・の上・を刺す)」と呼ばれました。トンボの動作からつけられた名称ですね。
また、トンボを色によって区別している所もあるそうです。赤はフレ、黒はクンネ、まだらはシリキオをつけて呼んだそうです。
アイヌの諺に「トンボがたくさん群れている所へ行き合わせると縁起がよい」とあるそうです。街ではなかなかトンボの群れに出会えませんが、釧路湿原周辺では確率は高そうですね。

ツルコケモモ

クランベリーでお馴染みのツルコケモモ。
温根内木道の高層湿原では蕾が膨らみました。
可憐な花が見られるのももうすぐです。

アイヌの人たちが利用したのはツルコケモモの実で、アイヌ語は、カタカウレ
「<katam-sar-ka-hurep(ツルコケモモ・原・の上・赤い実)」。
その実を生で食べました。また、マスを食べるときの調味料として利用したそうです。
味見をしたくなりますね。

地名にも残されており、厚岸町にある「片無去」は「ツルコケモモの湿原」の意味。
そこでは今でもツルコケモモが群生しているのでしょうか。
地名の意味が分かるとその場所に愛着を感じ、足を運びたくなりますね。