は行

火の神

寒い季節、火の存在は欠かせませんね。
アイヌの人たちは火をアペフチカムイ「ape-huci-kamuy(火・老婆・神)」と呼びました。
囲炉裏の中に住み、人間を温め育む、最も身近で重要なカムイ(神)です。
いろいろな儀式において、最初に祈りの言葉を捧げるのは火の神です。他の神々への伝言役を果たしてくれ、至らぬ人間の言葉などがあっても怒らないで聞いてやってくれと「根回し」までしてくれるそうです。また、魔物からも守ってくれる存在でした。
火の神は常に人間たちのそばにいて、見守ってくれていたのですね。

ヘビ

先日、温根内木道の横でヘビに会いました。冬眠から覚め、湿原の中で餌を探していたのでしょうか。 ヘビをアイヌ語で、タンネカムイ「tanne-kamuy(長い・神)」といい、子どもたちはヘビを殺したりするなと大人から戒められたそうです。病気になったり、 財産を失ったりというヘビの祟りを恐れたようです。 悪い話ばかりではなく、飢饉や津波から人間界を救った物語もありますし、ヤナギの削りかけでヘビの形を作った女性のお守りもありました。 また、クマはヘビが大嫌いなので、クマと出会ったときは縄を引きずって逃げると追いかけて来ないというクマ対策も伝えられています。 クマに出会いそうな場所へ行くときは、ロープ持参もいいかもしれませんね。

ヒメマス

ベニマスのDNAを持つ阿寒湖原産のヒメマス。釣り人に人気があり、高級魚としても知られていますね。
湖が氷結したこの時期、アイヌの人たちは氷上の穴のあいている場所や火を焚いて穴をあけ、ヒメマスを獲りました。
アイヌ語ではカパッチェプ「<kapar-cep(薄い・魚)」と呼ばれ、ヤマベと比べて扁平だというところから命名されたようです。秋の産卵時期には、アイヌの人たちはヒメマスを獲る前にカムイノミ(神に祈る)をし、最初に獲れた魚は火の神に供えたそうです。
味のよいこのヒメマス、蝦夷地探検家の松浦武四郎も阿寒で食べ、「味殊に美にし」と『久摺日誌』の中で絶賛です。
阿寒湖の氷上釣りはワカサギだけではなく、ヒメマス釣りに挑戦もいいですね。

ホオジロガモ

頬の白い斑が愛らしいホオジロガモ。釧路湿原の湖沼にも渡ってきましたね。

アイヌ語名は「エアウワeauwa」で、ホオジロガモの鳴き声からつけられた呼び名
だそうです。

鳥の鳴き声は人間に何かを伝えるためのメッセージと捉えていたアイヌの人たちは、ホオジロガモの鳴く声にも耳を傾けました。「ピーピー」と鳴くと東風が吹いて海が荒れる。「エエイ アウワ」とか「アッホウ エアウワ」と鳴くと、波の穏やかな凪の状態になると聞き分けました。ホオジロガモを含めた水鳥も、魚の回遊を教えてくれ、天侯の変化を教えてくれる神だそうです。

冬のバードウオッチング、ホオジロガモの声も聞いてみたいですね。

2014/11/14号掲載

ヒバリ

空の上でホバリングしながら鳴き続けるヒバリ。

その声をアイヌの人たちは次のように「聞きなし」しました。「ヘンパラ マメ タラ ケイッカ ソ ケイッカ(いつ豆の俵を私が盗んだ?盗んだ?)」

聞きなしから、さらに発展させ小さな物語やメッセージを組み立てるアイヌの人たち。そんなお話がたくさんありますが、ヒバリのさえずりは、盗みの嫌疑をかけられチャランケ(談判)をしている声のように聞こえたのですね。

ヒバリをアイヌ語で、チャランケチ「caranke-cir(談判する・鳥)」とも呼んでいます。

2013/5/10号掲載