2010年11月

キハダ

「シケぺ採りは霜が降りてから。甘みがつくんだよ」と、弟子屈のアイヌの方から教えていただいた。

みかんの皮のような味を持つキハダの実をアイヌ語では、シケペ「sikerpe(キハダの実)」と呼び、保存ができるので秋の終わり頃まで多量に採取したそうです。

風邪や胃腸の薬にもなるこの実を、いろいろな根や豆などと一緒に煮て食べました。

 また、黄色い内皮は、シケニ「sikerpe(キハダの実)ni(木)」と言い、最も尊い神にささげるイナウ(木幣)は、この木で作りました。

神の国に届くと金のイナウになるといわれ、位の高い木だそうです。

2010/11/18号掲載

コウライテンナンショウ

薄暗い林内の草が枯れ始める中で、松明のように真っ赤な実をつけているコウライテンナンショウ。
見るからに毒々しいその赤さにはドキッとさせられますね。

山菜図鑑でも毒草として扱われていますが、阿寒のあるアイヌの方から、
今も下痢をしたときにこの赤い実を飲んでいるという話を聞きました。
また、アイヌの人たちは晩秋にこの根を掘って食べたそうです。
中心の芽の出る黄色い部分は有毒なので取り除き、炉の熱い灰で焼くとおいしいそうです。

アイヌ語ではラウラウと言い、茎がヘビの鱗に似ているので「ラムラム(鱗)」からきた名前のようです。

2010/10/18号掲載

トリカブト

有毒植物のトリカブト。この花を見ると、秋が近づいていることを感じますね。
トリカブトは全草猛毒ですが、特に根に毒性が強く、アイヌの人たちはこの根をスク「surku(トリカブトの根)」と呼んでいます。矢毒に用い、クマなどの猟に欠かせないものでした。そのため、毒性の強いスクを求めて、遠くまで採りに出かけたそうです。そのような場所は地名にも残っていて、阿寒湖に入っている川、尻駒別は「トリカブト・ある・川」の意味だそうです。
毒の効果が強いものは、メクラグモの口に塗ると、たちまち脚がバラバラと落ちてしまうそうです。

2010/08/18号掲載

ハシドイ

「人間のためによく働くんだよ」と天上の神から言われ、地上に降ろされたというハシドイ。
「30年たったら石に化ける」といわれるほど腐らないこの木を、アイヌの人たちは「健康な木」と捉え、チセ(家)の柱や墓標などに使ったそうです。
アイヌ語で一般にプンカウ(ハシドイ)と呼んでいますが、美幌や屈斜路ではプニ「pus(はねる)ni(木)」。
沙流地方ではイタ・ルイ・マッ「itak-ruy(おしゃべりする)mat(奥さん)」とも呼ばれました。火にくべると、パチパチと勢いよくよくはねながら燃えるので、この名前が付けられそうです。
2010/07/20号掲載

オオウバユリ

凛としたオオウバユリの花は、もう少し待たなければいけませんが、
根(鱗茎)を採取するのは今の時期、6月の末から7月の初めだそうです。
アイヌ語でオオウバユリの鱗茎をトウレ「turep<ru(とける)re(させる)p(もの)」と呼び、
ことのほか重要な食料でした。つぶして上等な澱粉をとり、残った繊維も捨てずに団子
にして乾燥させ保存しました。その作る過程は手間と時間がとてもかかるものですが、
カムイ(神)からいただいたものを無駄にしないアイヌの人たちの利用法なのでしょうね。
2010/06/30号掲載