ヒシの実

塘路の駅前でヒシの実入りのいもだんごを食べたことはありますか。
ほくほくとしたクリの味にも似たヒシの実を、
アイヌ語ではぺカンペ「pe(水)ka(の上)un(にある)pe(もの)」と呼んでいます。
塘路湖のペカンペは昔、ヒシの実を毛につけた熊が湖に落としたもので、
この湖のカムイ(神)が授けてくれたという言い伝えがあります。
湖畔に住むアイヌの人たちの大事な食料であり、胃腸などの薬としても利用されました。

塘路では9月に入ると、ヒシの実が豊かに稔ったことへの感謝と、採取の許しを願う
「ペカンぺ祭り」が平成2年まで行われていたそうです。
2009/08/28号掲載

ノリウツギ(サビタ)

今年もまた、車を止め見入ってしまった「サビタ」の花。
アイヌ語では、多くの地方でラスパニ「rasupa(サケやマスを突く回転銛の穂先と柄をつなぐ棒)ni(木)」と呼んでいます。材質が堅いため石に当たってもまくれたりしないので、銛の柄の先につけるのだそうです。

アイヌの人たちは、この木のいろいろな部分を利用しています。
ふわふわとした髄を抜いてキセルや針入れを作り、真皮は布にくるんでシャンプー剤として利用。竹のない道東地方では、口琴のムックリにもこのサビタが使われました。
サビタを使ったムックリの音色も聴いてみたいですね。
2009/08/12号掲載

やちまなこ

「湿地の中に湿地眼(やちまなこ)あるべさ。あれはトイ・ラサンペ(湿地の妖婆)が掛けた罠なんだ。(中略)ぼんやりこいて近寄ると、妖婆の罠にかかって、あっという間に脚を取られてしまい、騒げば騒ぐほど泥の中に引っ張り込まれ、とうとう妖婆の籠(サラニプ)の中にすぽっと入れられてしまう。(中略)何でも、うまそうな草の生えて、水の湧くところはおっかないものだ」

背筋がちょっと寒くなるこの話は、美幌の菊地クラ媼伝承の話です。
更科源藏が記録したものですが、アイヌの人たちは小さいときからこのような話をたくさん聞き、自然に対して畏怖と畏敬をもって育っていったのでしょうね。
2009/07/28号掲載