安政5年5月9日(旧暦3月26日)、松浦武四郎は6度目の蝦夷地探査で阿寒湖に向かう途中、アイヌの家で、クロユリ・ハクサンチドリ・キバナノアマナなどの根で作られた団子をごちそうになりました。
どのような味がするか気になりますが、今となっては根を食べることははばかれる植物たちですね。
キバナノアマナのアイヌ語名は「チカプトマcikap-toma(鳥・エゾエンゴサクの塊茎)」。団子のほか、アイヌの人たちは根を炉の灰の中に入れて焼いたり、煮たりして食べました。
武四郎はアイヌの人たちと、早春の花盛りの中を歩きながら阿寒湖に向かったのですね。
寒さをしのぐため、まんまるふわふわになったスズメ。
藪の中で寄り添っている姿は愛らしいですね。アイヌ文化では、スズメは家を守る神だそうで、「アマメチリカムイ(amam-e-ciri-kamuy穀物・を食べる・鳥・神)」と北見や美幌では呼ばれました。ですからスズメが軒下に巣を作ると喜ばれたようです。
また、「スズメの恩返し」という物語があり、「鳥たちが穀物を食べるといっても、どれほどの量だというのです。たくさん食べなさい」と、庭の隅にまいてくれた女性。
その女性が死にかけたときスズメが助けるという、心が温かくなるお話です。
小さな生き物も、人間と共に生きているというアイヌの世界観、素敵ですね。
赤い丸い果実が長く伸びた果柄の先に垂れ、熟すとくす玉のように5つに割れて朱色の種を吊り下げるツリバナ。風に揺れるさまがかわいらしいですね。
この木は弾力があり容易に折れないので、アイヌの人たちはイチイと同じように弓を作ったそうです。アイヌ語では弓の木を意味する「クニッku-nit(弓・柄)」とか、「コムケニkomke-ni(曲がる・木)」と呼ばれました。
また、ツリバナの材は粘りがあり緻密なので、細かい彫刻や細工を施すのに適しており、アイヌ模様を彫ったアクセサリーなどの材として現在も使われているそうです。
ツリバナの材で作ったアイヌ模様の細工物、見てみたいですね。
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